ウェーディングレスキュー湘南 2004 vol.2

9月23日、暑さの残る秋分の日。大磯ロングビーチのプールを利用して、ウェーディングレスキューが開催された。
昨年、仲間の事故をきっかけにスタートしたこのイベントは、体験を通して安全装備の確認と危機管理を学ぼうというもので、この趣旨にスキアシは今年も賛同。
造波プールを使っての水中での転倒、落水の実体験はとってもリアル。救急救命士による救急救命術講習も行われ、初体験の人はドキドキの、経験者はあらたな試みを、それぞれの体験を深めたのだった。

主催:synchro
後援:大磯ロングビーチホテル、大磯町消防署、JGFA



午前11時。昨年より天気ヨシ!受け付けスタート!

緊急蘇生術は人に伝えてはじめて自分のためになる。
クラブリーダーやイベント主催者にはぜひ覚えてもらいたいよ

救急救命士による救急救命術の講習。蘇生への努力は、まずは脳死の防止が目的と言ってもいいかも。
こういった事前体験を、多くの人に経験してもらいたい

話題のエイガ−ド各種。太ももまでカバーできるものが欲しいという意見や、コストを含むさらなる進化を望む声も多かった。
数万円という価格を安いとするか、高いと思うか・・・
事故に直結するエイの恐ろしさを知るエキスパートからは安いという声も多かったのだが・・・

各社自慢の安全グッズが並ぶが、ウェーディングに関しては今回もインフレータブルタイプの評判はよくなかった。自動膨張タイプはセンサーが水没すれば膨らんでしまうし、落水の場合、自動膨張でなければ、パニック状態で引き部を探り当てるのは困難だ。取り付け位置などの工夫でなんとかなりそうなのだが・・・
いずれにせよインフレータブルタイプはボートゲームなどでの使用に留めたほうがよさそうだ。

命に関わる装備であるにも関わらず、開発者が実際にテストしたものかどうか疑わざるを得ない製品もあった。
購入側はテストをする機会も少ないためにライフフベストの選定は必要以上に慎重にしたい
今回、実際に各社の製品を比較した参加者の目は厳しい。

浮いてないじゃん・・・メーカーは売る前に試してんのか?

水中でウェーダーを脱ぐのは実は至難のワザ。これにより逆にパニックに陥るケースも。
また、落水の場合、ウェーダー内で足が所定の位置からズレて、これまたパニックになることも。

スキアシ広島の星野。このイベントのためにやってきた。
着用するのはスキアシ指定のジャケットだが、どんな製品にも必ず弱点はあると思ったほうがよい。
このジャケットはネオプレ素材のウェーダーとの相性はとてもよいが、ナイロンやゴアなどの素材とは浮力が合わないので注意したい。
体に密着し自由度が高いため、短距離を泳げばなんとかなるようなケースで威力を発揮するが、自分のスタイルとよく相談したい。こういうことは実体験から導きだすしかないのだ。

真冬まんまの装備で臨むSBMスタッフの前田サン。
ルアーや小物類までもそのまんま。リアリティーなのだ

「海守」とは、海の緊急通報番号「118」を運営する日本財団と海上保安庁のコラボ組織。
実際は命に関わる通報の場合「110」でも「119」でも構わないのだが「118」は海に特化したスペシャルナンバー。
日本財団の担当者のお話によれば。年間の釣り人の海難事故死は約300名にのぼり、そのほとんどがウェーディングのステージとなる、いわゆる腰下のシャローからの「流され」であることを特に強調されていた。

おつかれさまでした!
来年はさらに多くの参加者をお待ちしたいです。
ウェーディングレスキューはシーバスマンの良心である。決してハデなイベントではなく、むしろ冷たく寒い。
ここでの実体験は形としては残らないが、形のないものこそ大切なのだ。
たとえばルアーの色や動き、飛距離といった誰にでもわかりやすいPRはメーカーの市場喚起に向けた妄想に近く、命あっての戯れ言にすぎない。
今回、実際に使用してみて参加者たちからサイテーの評価を受けたライフジャケットがあったが、客観的な判断であるからしょうがない。もちろん釣り用であるが、少なくとも自分はそれを仲間たちには勧めない。
こういうものが普通にショップに売っているとはびっくりである。あなたの選んだ安全装備が命を預けるに足るものかどうか、もういちど確認する必要があるかも知れない。
ルアーに限らず、魚の口から手元までのタックル(素材と言ってもいいかもね)の進化とくらべ、命を守る技術はあいかわらず幼稚なままだ。
現場から離れたまま、日本のデザインにありがちな、お座敷デザインともいうべきモノが氾濫するなかで、友人の死をきっかけにスタートしたこのイベントだが、かなり前向きなアングラーたちの集まりと言ってよい。
そういった意味で、数多い釣り関連イベントのなかでも、ウェーディングレスキューは私の大好きなイベントのひとつだ。
シーバス界の大ベテラン、東京シーパラダイスの小林代表の「一歩さがった釣りをするようになった」という言葉が印象的だった。
また前回同様、大変な思いをして世話人をかって出た志波洲庵の横山代表に感謝したい。おつかれさまでした!(三宅)